雛人形が目を閉じてる意味は?怖い・不吉は勘違い!伝統の顔立ちを解説

雛人形が目を閉じてる意味は?怖い・不吉は勘違い!伝統の顔立ちを解説

お嬢様の初節句、まことにおめでとうございます。ご実家から受け継がれた大切なお雛様を飾りながら、そのお顔を久しぶりにご覧になって、少し驚かれたかもしれませんね。まるで目を閉じているような、細く静かな表情を見て、「あれ、こんなお顔だったかしら…」「もしかして、何か不吉な意味があるのでは?」と、心に小さなトゲが刺さったように感じていませんか?

でも、どうぞご安心ください。そのお顔には、怖い意味など一つもなく、むしろお嬢様の穏やかな幸せを願う、千年続く深い祈りが込められているのです。

この記事では、その不安を「ご自身の雛人形への誇りと愛情」に変えるお手伝いをさせていただきます。読み終える頃には、以下のことがすっきりと分かるはずです。

  1. あなたのお人形の「お顔」の正体
  2. その目に込められた、本当のやさしい意味
  3. これからもっと、お人形を好きになるためのヒント

さあ、ご一緒に、あなただけのお雛様の物語を紐解いていきましょう。


雛人形の目が閉じているのはなぜ?お顔のタイプ「書き目」「入れ目」を簡単診断

まず最初に、あなたのお雛様のお顔がどのタイプなのか、一緒に確認してみましょう。専門的な知識はまったく要りません。お雛様のお顔をそっと覗き込んで、下の質問に答えてみてください。

質問:お人形の目は、筆で一本一本「描かれて」いますか? それとも、ガラスのような玉が「埋め込まれて」いますか?

いかがでしょうか。

もし、繊細な筆の線で目が描かれているのなら、あなたのお雛様は「書き目(かきめ)」という、とても伝統的なお顔です。この記事で主にお話しするのは、こちらの「書き目」のお雛様についてです。

一方で、ガラスや樹脂のつぶらな瞳が埋め込まれている場合は「入れ目(いれめ)」と呼ばれ、現代のお雛様では主流のタイプです。こちらもとても素敵なお顔ですね。


雛人形が目を閉じている意味とは?怖いどころか高貴さと優しさの証

ご自身のお雛様が「書き目」だと分かったところで、一番気になっていらっしゃるであろう、その意味についてお話ししますね。

結論から申し上げますと、その閉じているように見える目は、高貴な身分であることの証であり、穏やかで優しい心を表現する、日本の伝統的な美意識の表れなのです。

この「書き目」という技法は、「木目込み(きめこみ)人形」という、ふっくらと丸みを帯びた愛らしいお人形の、代表的なお顔です。おそらく、あなたがお持ちのお雛様も、この木目込み人形ではないでしょうか。

職人の間では、この細い目のことを特に「ささ目」と呼ぶこともあります。これは笹の葉のように細いことから来ており、決してネガティブな意味合いはありません。むしろ、職人が「穏やかで、優しい表情になりますように」と、一本一本の線に祈りを込めて描くものなのです。


ワンポイントアドバイス!

お人形のお顔に不安を感じたら、それはあなたの感性が豊かな証拠です。

なぜなら、この点は多くの方が最初に戸惑われるポイントだからです。娘がこのお人形の顔を怖がると、悲しそうな顔をされるお母様がいらっしゃいます。でも、その意味を知ると、素敵と感激されました。


目を閉じている意味のルーツは平安時代?「引目鉤鼻」に由来する高貴な表情

では、なぜこのような表情が「高貴さ」のしるしなのでしょうか。

少しだけ、歴史を遡ってみましょう。想像してみてください。今から千年ほど昔、きらびやかな平安時代を生きたお姫様たちの姿を。『源氏物語絵巻』などをご覧になったことはありますか? そこに描かれた高貴な人々のお顔は、すっと通った鼻筋に、細く引かれた目、という特徴があります。これを「引目鉤鼻(ひきめかぎばな)」と言います。

実は、雛人形の「書き目」の表情は、この平安時代の絵巻物に描かれた高貴な顔の表現にルーツを持っているのです。直接的な感情を表に出さない、奥ゆかしく、物静かな表情こそが、当時の人々にとって最も美しいとされた理想の顔でした。

あなたのお雛様も、その千年の歴史を持つ日本の美の伝統を、今に伝えてくれているのですね。


【比較】目を閉じている「書き目」と現代的な「入れ目」の雛人形|それぞれの意味と魅力

「じゃあ、目がぱっちりした入れ目のお人形は、伝統的ではないの?」と思われるかもしれませんね。

そんなことはありません。「書き目」と「入れ目」は、いわば対比される関係にありますが、どちらが上でどちらが下、というものでは全くないのです。それぞれに、時代背景と、違った魅力があります。

「書き目」と「入れ目」の魅力くらべ
特徴書き目入れ目
印象穏やか、奥ゆかしい、瞑想的華やか、愛らしい、人間的
歴史平安時代からの伝統を受け継ぐ明治時代以降に普及
主な人形木目込み人形衣裳着(いしょうぎ)人形
魅力見る人の心によって表情が変わるような、素朴で語りかける魅力誰が見ても愛らしいと感じる、親しみやすい魅力

目を閉じている雛人形がもっと好きになる!意味を知った後の楽しみ方3選

ここまで読んでくださったあなたは、きっともう、ご自身のお雛様への見方が少し変わってきたのではないでしょうか。最後に、その大切な絆をさらに深めるための、簡単なヒントを3つお伝えします。

  1. 少し下から、そっと見上げてみてください
    「書き目」のお人形は、少し見下ろす角度からだと、表情が硬く見えてしまうことがあります。ぜひ、少し屈んで、お人形と目線が合うか、少し下から見上げるような角度でご覧になってください。ふっくらした頬と、細い目の線が作る、穏やかな微笑みにきっと気づくはずです。

  2. お嬢様に、この目の意味をお話ししてあげてください
    もう少しお嬢様が大きくなられたら、ぜひ今日あなたが知った物語を話してあげてください。「このお目々にはね、あなたが優しく、穏やかな子に育ちますように、っていう千年前からの祈りが込められているんだよ」と。そうすることで、お雛様は単なる飾りではなく、家族の物語を繋ぐ大切な宝物になります。

  3. 毎年、同じ角度で写真を撮ってみましょう
    毎年お雛様を飾るたびに、同じ角度から写真を撮ってみてください。お嬢様の成長と共に、お雛様の表情が少しずつ違って見えることに驚くかもしれません。嬉しい年には微笑んでいるように、少し悲しい年には一緒に悲しんでくれているように。あなたの心に寄り添ってくれるのが、「書き目」のお雛様の最大の魅力なのです。


まとめ:雛人形が目を閉じているのは深い愛情のしるし!その意味を次世代へ

いかがでしたでしょうか。
あなたを少し不安にさせた、その細い目。それは怖いどころか、千年の歴史と、職人の技と、そして何より、あなたへと繋がる家族の愛情が込められた、誇るべき「しるし」だったのです。

かつて、あなたのお母様やお祖母様が、あなたの幸せを願ってこのお雛様を飾ってくれたように。かつて、あなたのお母様がそうしてくれたように。これからは、あなたが愛情のバトンを受け継ぎ、お嬢様へとこの人形の素敵な物語を伝える「語り部」なのです。

さあ、自信を持って、お雛様を一番素敵な場所に飾ってあげましょう。
素晴らしい初節句になりますように。心からお祈りしております。


[参考文献リスト]